ANDADURA

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2024.12.21

/ oblique /

oblique=斜め」という切り口で、小銭入れ、マチ付きポーチM、Lの3型を作りました。
 
 
cion case
size : w105×h68×d10 (mm)
material : suede
 
小銭入れ。最初にフッと作ったのは、何年前かは覚えていませんが、チャコールのスウェードで作ったこともあり、ネズミと呼んでいました。
その当時は、同系の革色に手持ちがなく、そもそもなるべく単一の素材で作りたいという意図もあり、ありもののファスナー引き手で着地させようと思っていましたが、組み合わせに納得できないこともあり、ボツにしました。今は、いくつかの革色が工房にあること、単一の素材でなくてもいいな(引き手だけ色が濃くなっていくのもいいなと思える)と思えたこと、「斜め」という切り口を得たことで、制作してみようと思いました。
このかたちは、自分でも少しよくわからない部分もありますが、ずっと気になっている存在でした。気に入っていただける方、いらっしゃいましたら嬉しいです。ネズミと言いながらも、異素材を組み合わせられることが嬉しく、ネイビーでも制作しました。
 
 
 
d pouch M
size : w162×h98×d45 (mm)
material : goat & suede
 
d pouch L
size : w220×h130×d65 (mm)
material : goat & suede
 
 
dポーチは、MとLの2サイズ制作しました。引き手は同系色の革を用い、ファスナーの生地はグレー味のあるベージュにシルバー金具です。
 
素材は、スウェードと銀すりゴードで制作しました。スウェードはチャコールとネイビー、銀すりのゴードは、ANDADURAの定番の革を作ってくださっている、佐藤さんが作っている革です。黒の染料で染めたものですが、ネイビーのような色味のインクと、素直な革の色味のタンの2色です。黒染料のインクの色味と引き手のネイビーが合うのは、同じ佐藤さんの革だから色が合うのかな?と、組み合わせられる喜びを感じました。
 
dポーチのdは、奥行きをあらわすdepthのd、日常の小物を入れることを想定して作りましたので、dにはdayも少々かかっています。
 
 
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ー長めな制作話ー
 

手を動かしながら、新しいものを作る。

前の展示会に在店していた時に、「ポーチをスウェードではなく銀面のある革で作ってみよう」とフッと思ったので、ひとまずはそこを起点に、革屋の佐藤さんが、柔らかく仕上げてくれた革で試作してみる。
 
今あるポーチは四角いタイプなので、台形で試作する、ファスナーのパーツで間口が狭くなるので、口元を少し広げる形は試してみたいと思っていた。
そういえば、斜めの線を用いたことはあまりなかったなと、ふと思う。何度も台形の形を試みるも、斜めの線が、少々作為的すぎる。何ミリでテーパーをかけようが、作為感は消えてくれない。さて、斜めをどう扱おうか。
 
「斜め、斜め、斜め。」
 
斜めという言葉が、頭のなかに浮かぶと、ブライアン・イーノ氏が作った「oblique strategies」(直訳:斜めの戦略)というカードの名が思い出される。
このカードの愛用者(カードは手に入らないのでブラウザ版を愛用)でもあるので、「oblique strategies」と頭の中で唱える。strategies・戦略かぁ、と頭の中で「斜めの戦略、斜めの戦略」と唱える。台形で斜めを生むのではなく、結果として斜めを生むかたちの方が、戦略的でもあるし、斜めという線も楽しめそうだ。マチができると、必然的に斜めの線が生まれる。いいね。そうしてみよう。oblique strategies」という言葉に引き寄せられながら、作り方の輪郭がぼんやりと見えてくる。
 
台形ポーチはボツにして、新作墓場(ボツになった試作たちが眠る箱)行きにする。ずっと前に作ってボツにしていたマチ付きのポーチに着眼する。新作墓場から取り出して、眺め、今回の作り方では、これを起点にしてみようか。ボツにしたその頃は、素材をうまく組み合わることが出来なかったけど、今は様々な色や、素材が工房にあるので、なんとか組み合わせられるかもしれない。
 
ネズミみたいな小銭入れも、ずっと前に試作して、「なんだかよく分からないものができた。」(このアイテムもパーツの組み合わせがうまくいかなかった)とボツにしていたけど、斜めという切り口を得て再浮上。よく分からないながら、ずっと気になる存在でもあり、たまに新作墓場から取り出しては、
眺めていた。ネズミと呼んでいたので、当時試作していた、チャコールのスウェードで作ってみる。眺めて、使っても、なんだかよく分からないなぁ。と思う。しかしとても何かが気にもなる。
 
今年は、「なんとなく」という言葉に、いつもより力点を置いてみようと思っているので、出してみることにしました。
 
「なんとなく」を携えると、さまざまなものに影響されながら、フワフワと新作が作れるようで、新鮮な感覚です。そのフワフワとした作り方は、なんとも謎で、これを意識してやろうと思っても、無理なんだろうな。今回も新作墓場から多大なるサポートを受けながら完成。過去の自分よ、ありがとう。未来の自分宛に、いろいろと新作墓場へ送り込むこともできました。よし。
 
 
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