ANDADURA

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2023.8.7

憧れ

 

8月7日は僕の誕生日。
毎年、誕生日の過ごし方は1週間くらい前から考えはじめ、そわそわするのが習慣になっています。誕生日に過ごす1日は、それが1年を象徴する出来事であるかのように、1日の過ごし方がトレースされ、広がっていく、そんなイメージを持って大切にしています。

 
いろいろ考えるものの、次の3つの過ごし方になります。
 
何もせずに過ごす。(何もしないとはいえ、本は読む、映画は見ない。)
掃除をして過ごす。
新作をつくる。
 
のどれかになります。その時間の過ごし方が好きです。
 
数日前に、Mac Demarcoさんの『One Wayne G』という199曲入りのアルバムを聴いていたら、あの時に作っていたものをもう一回作ろうという意欲がムクムクと湧いてくる。
今年の誕生日は新作作りの時間になりそうだ、と思っていたけど、ササッと形が決まってしまった。
 
なので、8月7日はブログを書いてみよう思いつく。
自分自身に向けて、というか、ただ文章を書くということが、なかなか出来ないなぁと感じていたので、たまには思うがままに文章を書いてみる、という自分へプレゼント。
 
作った新しいものというのは、数年ころ前に、かなり意欲的に作っていたもので、着地しなかったもの。
「Open Case」という名前で、ただの袋といえば袋。「作り手として何もしていないじゃないか?」と言われれば、まさにそのようなものを作りたかった。というか作る必要性を感じていた。
 
ものを作る上で僕の理想は、星座のようなあり方。空に浮かぶ光の点をつなぎ合わせて、意味を生み、それが、ものがたりになる。
 
憧れのように、夜星を眺めるけど、ただ、星は光であり、僕に物語ってはくれないことに、はがゆさを感じる。
 
僕が作っているものは、装飾性のない、シンプルなものだと思うけど、装飾というものへの憧れもある。デザインを学んでいるうち、「シンプル」という言葉はすごい強度で僕に作用した、有無を言わさず入り込んできたと言ってもいいかもしれないくらい。
 
装飾というのは、人々が共有するものがたり、と言い換えることもできる。
児島虎次郎さんが収集した古代エジプトの装具展を眺めていると、動物や架空の生き物や、人やエネルギーや自然などが描かれている。
それらは、人々が見ていた世界でもあるし、集団の中で共有した(くらくらするくらい)豊かなものがたりなのだ。
 
その繊細さを眺めながら、数千年の時間のあいだに、僕らが無くしてしまった、あるいは感じられなくなったものを感じ静かにうちのめされる。
もし仮に、僕がものに装飾を施しても、それは自分のからだから出たものではなく、装飾の為の装飾になるだろうと思う。
 
星座がものがたらないこと、装飾にものがたりを込められないことは、同じ根っこだ。
 
「シンプル」という造形は、人々が個人になっていくこととリンクしている。
1900年代頃から始まった流れだろうか。僕自身もその流れから出ることはなかなかに難しい。
 
というわけで、オープンケースを作ろうと思い至ったのだ。
シンプルになるなら、これ以上ないというくらいシンプルなものを作る。その極北は、引き返し線のような役割を担ってくれるだろう。
そこに行ききることなしには、豊穣な世界の流れには入れないのではないか?と切実に考えていた。(結構シリアスですね。妄想的でもある。)
 
オープンケースは完成には至らなかったその訳は、適切な素材を手に入れることが出来なかったから。
「この素材で作ろう」と目星をつけていた素材があり、試作を重ねた。そろそろ材料屋さんから本ちゃんの材料を購入しようと思ったところ、なかなかのハードルのロットが設けられていた。その上、素材はかなり前に見たもので、サンプル帳はいただいていたものの、豪雨被害の時に流されてしまっていた。サンプル帳も無く。革屋さんが、素材のサンプルもないとのことで、記憶だけを頼りに素材を作ることが出来なかった。(その個人的なアイテムに、中古車が買えるくらいをかけることが出来なかった、とも言える。)
 
ただ、それだと悔しいので、その時に進めていたサンプルをベースにして、スウェードのラインナップを立ち上げていった。
Open caseとFlat shoulderの本体の構造が同じなのは、Open caseを断念することが出来なかった為、Open caseをベースにして作ったからです。
 
数年前に作ったkarukuというラインも「Open Case」の受け皿として考えていましたが、karukuを作った時と今の感覚が違うので、分けなくてもいいか、と思っています。
(この辺りのこともまた文章にしたいです。)
 
灼熱の日々が続く中、ラジオから『One Wayne G』の曲(調べたら 20190726という曲です)が流れ、何かに感化され、Open Caseを作りました。
『One Wayne G』のてらいのないシンプルな音は、Open Caseを作りたいと思った気持ちに通じるものがあるのかもしれません。
当初はいささか妄想じみたシリアスさで考えていましたが、今はうって変わって、てらいなく素直に作っています。多分Mac Demarcoさんの音楽に触発されたのだと思います。
ありがとうございます。
 
久々に思いつくままに文章を書くのは楽しいです。
いつもは、数日くらい寝かせてアップするのですが、今日は誕生日ということで、一筆書きで書いたままアップします。
暑い日が続く中、さらに暑くなりそうな文章を読んでくださり、ありがとうございます。
今から少し掃除します。
 
 
2023.8.7 | note
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