ANDADURA

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2022.6.9

革についての現状と今後の革作りについて

・革についての現状
 
 
ANDADURAで使っている革についての現状について、少し書いてみたいと思います。

ANDADURAで使っている革は、独立当初より革屋の佐藤さんとANDADURAが目指す理想を共有しながら作っています。
2010年にANDADURAを始めてから、ベースとなるヌメ革をさんざん試し、現在は昭南皮革という日本で2箇所あるピットなめし(プールのような鞣し槽につけ時間をかけて革をなめす方法)で鞣した革をベースを染色し加工し、仕上げています。
 
革の業界ではコロナ渦の影響が今年に入ってから現れてきているように感じます。
加工業者さんの工賃の値上げや、廃業。業界自体は人員削減といった縮小傾向にあります。

今年の1月にANDADURAの革漉きを行なっている加工屋さんが廃業してしまいました。
新しい革漉き屋さんが加工した革が届き、考え込んでしまいました。
 
これまでANDADURAでは、革を作ってはデータを取って、次に生かしよりよくしていくというやり方をしていました。
その際のデータの基準になるのが、革の厚みです。最初に漉いた厚みから、アイロンの工程で革がしまり厚みが変わります。
アイロンの圧と温度で変化した仕上がりの厚さと革の柔らかさなどを手感覚と計測した数字をもとに、最初に漉く厚さを決め、アイロンの温度、圧力の調整を行ってきました。
 
新しい革漉き屋さんは、漉きの時点での誤差が大きく、仕上がった革を見ても、アイロンの工程による厚さの変化なのか、革漉きの誤差なのかが判断できません。判断の基準である厚みが、最初の漉きの工程で厚さがどのくらいブレているかが仕上がった革を見ても分からず、データを取って次に活かす革作りが難しくなってきております。
漉き加工にブレはつきもので、これまでもブレは許容してましたが、ブレの幅が大きいこと、ブレの傾向が分からないというのが悩ましいところです。
 
さらに、去年頃から、最終工程である、裏を仕上げる際のアイロン加工の際に、2本の傷のような線が表裏両方に入るようになりました。
その部分は避けて裁断していましたが、革屋の佐藤さんが言うには、今年に入り顕著に出るようで、やってみないとどうなるか分からない機械に通すのは怖いとの事でした。
 
アイロン屋さんでも原因は不明との事でした。
アイロン屋さんで使っているアイロンは古いもので、メーカーも廃業しており、不具合を総合的に判断できる人がいないのが現状です。
今後も、原因が解明する事は難しいと思いますので、この工程での不具合を解消する事は難しいです。

この流れの中では、これまで出来ていた事が、急に出来なくなる事が今後も増えていくと考えられます。
 

今後の革作りについて

さて、ここまで革作りの現状について書いてきました。
ここからはその中で、どういう革作りをするかということについて書いてみようと思います。
 
今後これまでと同じような作り方をするのであれば、革漉き加工でロスが出て、アイロン加工でロスが出て、使える部位の少ない革を作り続けることになってしまいます。
 
まず、僕自身の革のイメージを、現在の状況の中で、変化させる必要があるように感じます。
加工が出来ないからと妥協するのでなく、現在の状況のなかで、できる理想を見つけていくこと。それは、作り込んだ革から、革そのまま柔らかさを生かした革づくりへのシフトだと考えています。

加工の回数を減らし、加工によるブレをなるべく小さいくする。
どうなるか分からない裏アイロンの行程はせず、革の最初の厚みに余裕を持たせ、漉きによるブレで(薄くなって)使えなくなる可能性を少なくする。裏の仕上げもアイロンではなく、昭南皮革の革がもつ裏面の綺麗さを活かすようにする。
 
話は変わりますが、2018年頃に栃木レザーから昭南皮革にベースの革を変えたとき、革の自然な柔らかさに魅せられました。
これまで、行程を重ね、作り込んでいく革作りをしていましたが、より自然な革の柔らかさに近づけるよう行程や革への負担減らす方向に少しづつ進んでいました。
 
革そのままの柔らかさを活かすようにするというイメージは、この状況になる前に種としてありましたので、その時感じたイメージを追求する時がきたんだな、と感じています。
お財布を手にした時に、気持ちの良い手触りだな、と感じれる自然な革作り。数年後、あの時革の作り方を変えて良かったねと言えるよう、新たなイメージに向けて歩みたいと思います。
 
できなくなったことを追求し続けても、僕を含め、関わる人たちの負担になりますし、出来ないなら出来ないでいいよ、となんでも受け入れていると、どんどん悪くなっていく。
その間で良きバランスを見つけ、より良く歩んでいけたらと思っております。
 
長い文章を読んでいただいて、ありがとうございます。
 
 
ANDADURA 山本祐介
 
 
 
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